胆汁酸を構成要素とし、S-S結合を「リンカー」部位に組み込んだ新規キャリア分子を合成を検討した。胆汁酸の3つの水酸基をシリル基で保護して、末端カルボン酸部位をチオール基に変換した化合物の合成を検討したが、シリル基が水酸基間で転移を起こしたため、保護基をシリル基からアセチル基に変え、カルボン酸部位のチオール化を行った。さらにアセチル基を還元的条件下で脱保護し、3つの水酸基とチオール部位を有するFacial Amphiphile部位の合成を行った。次に、Facial Amphiphile部位を接合するためのプラットフォームとなる部分の合成を検討した。プラットフォームとしてはトリ(2.メルカプトエチル)アミン、ジ(2-メルカプトエチル)アミンを用いた。これらの化合物と前述のFacial Amphiphile部位との間のS-S結合形成反応を検討した。カルボメトキシスルフィニルクロリドを用いて、S-S結合生成反応を行ったところ、良い収率で目的としたキャリア分子を合成することに成功した。合成したキャリア分子は有機溶媒、水等に対する溶解度が極めて低い(1x10^<-5>mol/l以下)ことから、精製が困難であり、またキャリア分子としての機能評価も十分行えなかった。そこで、現在Facial Amphiphile部位の水酸基をスルホン酸エステル化、リン酸エステル化することにより溶解性の向上を検討中である。
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