平成15年度にS-S結合を有する「リンカー」を導入したキャリア分子を合成したものの、水溶性が極めて低く、機能評価にはいたらなかった。そこで本年度は胆汁酸部位の水溶性向上を目的として、胆汁酸の3つの水酸基をスルホン酸エステル化、リン酸エステル化したもの等を合成し、その水溶性、臨界ミセル濃度の測定を行った。種々の条件で、水溶性化部位の導入を行ったところ、3つの水酸基のうち2つまで、スルホン酸エステルとすることができたが、全てに水溶性部位が導入されたものは低収率(〜15%程度)でしか得られず、また精製が非常に困難であった。得られた粗生成物を用いて、分子集合体形成能を検討したところ、CMCが存在することから、何らかの分子集合体を形成していると思われる。現在は、生成した集合体の薬物包接能を検討中である。光照射により切断されるリンカー部位の組み込みも検討した。モデル化合物として、胆汁酸2分子を3-ニトロ-4-ヒドロキシメチル安息香酸を用いて連結した分子を合成して、光照射下でのその分解を検討した。その結果、上記のリカーは反応当初、光化学的に加水分解を起こすものの分解生成物の妨害により、急速に分解速度が低下し、反応は完全には終了しないことが分った。
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