ガン細胞増殖抑制活性に必要なファーマコフォアを明らかにするためにリコテトラオサイドのアグリコ部分を替えた誘導体を合成、そのガン細胞増殖抑制試験を行った。 【1】トマチナーゼの大量生産・・・トマト寄生カビFusarium oxysporumの中でもトマチナーゼ活性の強い菌株を選抜し大量培養を行い、合成原料として充分なトマチナーゼの調製が確立できた。 【2】リコテトラオースの調製・・・トマト地上部より調製したαトマチンをトマチナーゼ溶液で処理し、リコテトラオースが75%の収率で得られた。 【3】リコテトラオース糖供与体の合成・・・切り出されたリコテトラオースをアセチル化した後、ヒドラジン酢酸塩で還元末端のアノマー位のアセチル基を除去した。これをトリクロロアセトイミデート体(Schmidt法)及び、DAST処理しフルオライド体に変換した。 【4】アグリコン部のライブラリーの合成・・・トリクロロアセトイミデート体を、シクロヘキサノール、グリチルリチン酸、コレステロール、ファルネソールの水酸基にグリコシル化、脱保護した後、生物活性用サンプルとした。イミデート体を用いるグリコシル化は収率が低いこと、非天然型のα配糖体が選択的に生成することからフルオライド体を用いてグリコシル化を行った。アグリコンにコレステロールを用いて実験したところ、収率が70%に向上した。しかし、イミデート体と同様にα配糖体が選択的に合成された。 【5】ガン細胞増殖抑制試験・・・合成したリコテトラオサイドのヒト肺ガン細胞(NCI-H460)、ヒト大腸ガン細胞(HCT116)に対する増殖抑制効果を検討した。現在、コレステロール誘導体が対照薬のシスプラチンと同等のGI50値を持つことを確認している。 今後、その他の化合物についても活性を測定し、構造活性相関を検討すると共に、DNA修復阻害活性試験を行い、作用メカニズムの解明に向けて研究を継続していく予定である。
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