研究概要 |
Ilimaquinoneは,ハワイ産の海綿Hippiospongia metachromiaより単離されたセスキテルペノイドキノンであり,細胞内小胞輸送のメカニズム解明のための強力なプローブとして注目されている。申請者は,ilimaquinoneのセスキテルペン骨格部分の構造と活性の相関に注目し,細胞内小胞輸送メカニズム解明のためのプローブとしてさらに有用な機能性分子を見いだすことを目的に,ilimaquinoneおよびダイバーシティーに富んだ誘導体の効果的な合成法の開発を行っている。申請者は,ilimaquinoneのキノン部およびセスキテルペン部を自由に変換可能にするため,それぞれを別途合成した後カップリングさせるコンバージェントな合成計画を立案し,先ずセスキテルペン部の合成を行った。 申請者の所属する研究室において高い光学純度で得られることを見いだしている5-tert-butyldiphenylsiloxymethyl)-3-methoxycyclohex-2-eneを出発物質として用い,C-9位(以後の炭素番号はilimaquinoneのものに従う)にメチル基およびベンジルオキシメチル基を立体選択的に導入した後,C-5位へのメチル基の導入,C-13位シロキシメチル基のメチル基への変換を行った。次いで,C-10位へのビニル基の導入に続くエノールエーテルの加水分解によりジエン部を構築した後,ケトンの立体選択的な還元,プロパルギルブロミドによるエーテル化を行いアレンをジエノフィルとした分子内Diels-Alder反応により立体選択的にデカリン部を構築した。さらに,C-6位酸素官能基の除去,デカリン核間の二重結合の立体選択的な還元,C-4(11)位二重結合の導入,C-15位へのキノン部とのカップリングに必要なヨウ素の導入によりセスキテルペン部の合成を達成した。
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