研究概要 |
ミクロネシア海域で採取されたホヤNeptheis fasicularisから単離された抗腫瘍性アザ3環性アルカロイドファシクラリンの基本骨格である1-アザスピロ[5.5]ウンデカン骨格構築の検討を行った。始めに環外にアシル基を有するexo型環状アシルイミニウムイオン中間体を経由するアザスピロ共役ジエン環化反応の検討を行った。1,5-ペンタンジオールより分子内に共役ジエンを有する3種のアミノケトン(N-Ts,Cbz及びBzアミノケトン)を合成し,それぞれについてギ酸を用いアザスピロ共役ジエン環化反応を試みたがいずれも不成功に終った。6員環exoアシルイミニウムイオン中間体は反応性が低いため共役ジエンとスピロ環形成を行う前に反応性の高い共役ジエン部分にギ酸が攻撃してしまい,共役ジエンを還元してしまうため反応が進行しなかったものと考察された。アシル基を環内に固定したendo型アシルイミニウムイオン中間体はexo型アシルイミニウムに比べ反応性が高いことから,次にendo型アシルイミニウムイオン中間体を経由するアザスピロ共役ジエン環化反応の検討を行った。N-Bnアミドケトンを合成しアザスピロ共役ジエン環化反応を行ったところ,スピロ環化反応が進行し,目的とする側鎖3'位にホルミルオキシ基を有する1-アザスピロ[5.5]ウンデカンを得ることができた。そこで本反応をファシクラリンの不斉合成に適用することとし,D-マンニトールより導いた光学活性アミドケトンを用い,endo型アシルイミニウムイオン中間体を経由するアザスピロ共役ジエン環化反応の検討を行っているが,今までのところ目的物を得るには到っていない。現在さらに条件を検討中である。
|