研究概要 |
本研究の目的は、主にNMR法によって超分子複合体中でのタンパク質分子の動的構造を詳細に解析するための方法論を開発し、応用することである。対象としては、リボソームと、現在研究代表者らのグループで立体構造決定、及び各種の物理化学的解析が進んでいるリボソーム再生因子(RRF)を用いている。平成15年度においては、まずリボソーム再生因子(RRE)及びその変異体について安定同位体標識した試料を発現・調製し、RRF単独での動的構造を、分子動力学シミュレーション及び核磁気緩和解析によって研究した。その結果、2ドメインからなるRRF分子において、ドメインの相対配置の変化に対応する遅い分子内運動が存在することを明らかにした(Yoshida, T.et al.,(2003)Biochemistry 42,4101-4107)。さらに、その運動性と、RRFの由来や、ドメインを連結するヒンジ部分のアミノ酸配列との相関を解析したところ、RRF分子のフレキシビリティーとリボソーム再生活性に相関が見られることが分かった。また、プローブ分子の導入及びリボソームとの架橋実験に用いるため、部位特異的にシステイン残基を導入した変異体RRFの発現系を網羅的に構築した。それら変異体とリボソームの架橋実験を行い、RRFとリボソームの相互作用点の幾つかを明らかにした。 現在、以上のような成果に基き、リボソームとRRFの複合体形成条件を最適化しつつ、複合体中でのRRFの構造情報をNMR(TROSY測定、転移NOE測定、飽和移動測定等)及びその他の手法により抽出することを試みている。
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