研究概要 |
本研究は、リゾチームをモデルに、アミノ酸変異による変性構造変化がどのように凝集反応と結びつくかを調べることを目的としている。我々の研究室は共同研究によりリゾチームが還元変性条件下でNMRにより解析したところ野生型にはAla9,Trp28,Trp62,Trp108,Trp111,Trp123からなる6つの疎水クラスターが存在し、Trp62Gly変異体ではその疎水クラスターがすべて崩壊することが明らかにした。 本年度はまずリゾチームの4つのSS結合を1つだけ保持するような種々の変異体とこれらにW62G変異を加えた変異体の計16種を作製した。3つのSS結合を欠損させることで、天然構造は保持できず、即ちリゾチームの還元変性状態に近いモデルができ、さらに1つあるSS結合の形成を変異体間で解析することにより初期のフォールディング反応を想定でき、それに競合する凝集反応の解明につながげることを狙った。変異体を変性条件下でSS-SH交換反応を行った結果、W62G変異導入によりSS結合形成が全てにおいて抑制された。これにより変性構造というのが構造形成に重要なファクターであることが明らかになった。さらに水中での解析では、野生タイプはS76-S80とS64-S80の変異体が他より優位に形成するのに対しW62G導入体はSS結合形成の優位性が見られなかった。即ち変性構造がSSの優位な形成に寄与し、変性構造が崩壊するとSS結合形成がランダムに起こることが示唆された。このことは、変性構造が還元状態からのフォールディング反応の初期において効率的に働き、凝集反応を抑制している事を意味しているかもしれない。これらの成果は国際学会で発表を行った(48thAnnualMeeting04年2月Baltimore)。さらに、各クラスターに関わる他の残基をGlyへ置換した変異導入を行い、5種の変異体を作製した。次年度にこれらの変異体の解析を行う。
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