本研究は、生体内の異なる部位での機能の違いを如何に画像解析できるかに注目し研究を計画した。生体内で細胞レベルの機能の違いを画像化するには、現段階では解像度の関係上困難であり、造影剤を用いた手法が採られている。このとき、性質の異なる造影剤を使用することで、結果として反映する最終的な画像の持つ意味は全く違ってくる。そこで、性質の異なる造影剤として14N、または15Nで標識したスピンプローブを合成し、さらに擬似試料を用いて性質の異なる造影剤の同時分離画像解析を行った。 昨年度確立した合成法を基に、14N、15N標識スピンプローブ剤を動物実験用に新たに合成した。また、化合物の水素を重水素化したスピンプローブを新たに合成したところ、これまでの水素置換体に比べ、約30%スピンプローブの線幅の先鋭化に成功した。さらに擬似試料(ファントム)を用いてプロトン電子二重共鳴装置(PEDRI)にて測定した結果、重水素置換体で画像強度が約30%増強した。 一方、正常動物の胃腔内に14N-oxo-Tempoを、尾静脈内に15N-carbamoyl-PROXYをそれぞれ投与し、プロトン電子二重共鳴装置を用いて同時分離画像化を行った。同時分離画像化手法は、Field Cycle法を応用し、14N、15Nスピンプローブの電子スピン共鳴磁場を交互に叩くことによって行った。その結果、両方のニトロキシルラジカル共に存在位置や大きさ、濃度を良く反映した画像が実験動物を用いて得られた。以上よりfield-cycle法を応用することで2種類の異なるスピンプローブを同時分離画像化できることが可能となり、今後部位特異性を持つスピンプローブ剤を合成し酸化ストレス性疾患モデル動物に適用することで、疾患の成因・進展に関与するフリーラジカル反応を解析できると考えられる。
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