研究概要 |
種々のフェノール性天然抗酸化剤のラジカル消去(水素移動反応)機構を分子論的に明らかにするために,水素引き抜き剤としてガルビノキシルラジカルやDPPHラジカルを用い,嫌気性条件下,アセトニトリル中,室温で,フラボノイド類やビタミン類などのフェノール性天然抗酸化剤とこれらのラジカル種との反応における紫外可視吸収スペクトルをフォトダイオードアレイ分光光度計で測定した.また,紫外可視吸収スペクトルの時間変化を速度論的に追跡することにより,ラジカル消去速度定数を直接決定した.この際,反応系の温度を精密に制御するために,本研究課題補助金によりペルチェ型温度コントローラ付セルホルダーを導入した.次に,この反応系にマグネシウムイオンなどの金属イオンを添加し,反応速度に及ぼす金属イオンの効果について検討した.その結果,カテキンやケルセチンは,金属イオンの添加によりラジカル消去速度が著しく加速された.このことから,これらのラジカル消去反応は,抗酸化剤からラジカル種への電子移動およびプロトン移動を経由する2段階過程で進行し,金属イオンは電子移動の結果生成するラジカル種の一電子還元体アニオンと錯体を形成することにより、反応を加速しているということがわかった.一方,プロポリスの主成分であるアルテピリンCやビタミンEモデル化合物の場合には,金属イオンを添加してもラジカル消去速度は変わらず,1段階の水素原子移動で反応が進行していることが明らかとなった.また,ラジカル消去反応が電子移動反応を経由する抗酸化剤については,その一電子酸化電位をサイクリックボルタンメトリーまたはセカンドハーモニック交流ボルタンメトリーによって決定し,一電子酸化電位と反応速度定数との相関性について検討した.その結果,一電子酸化電位が低い化合物ほど,ラジカル消去活性が高いということがわかった.
|