TAK1は炎症性サイトカインTNF-αによって活性化されるが、その活性化機構においてキナーゼドメイン活性化ループ内のThr-187のリン酸化が関与している可能性を検討した。リン酸化Thr-187を特異的に認識する抗体を作製し、細胞内でのリン酸化について検討を行った。まず、TAK1をその活性化因子TAB1およびTAB2とともに発現させると、非常に強いリン酸化が確認された。次に、TNF-αによる内在性TAK1のリン酸化について検討したところ、TAK1活性と一致してリン酸化が検出された。リン酸化は、刺激後2-5分において認められ、速やかに脱リン酸化された。これにはp38αによるフィードバック阻害機構における脱リン酸化が関与していることが明らかとなった。 TNF-αは、がん転移を促進する作用があることが報告されている。そこで、我々はマウス大腸がん細胞であるcolon 26細胞の実験的肺転移モデルにおいて、細胞をin vitroでTNF-α処理することにより転移が促進することを明らかにした。このTNF-αによる転移促進モデルを用いて、がん細胞内でのTAK1の役割について検討した。その結果、TNF-αによってTAK1が活性化されることを上記リン酸化抗体を用いて明らかにした。また、活性型TAK1を過剰発現させると転移が亢進することが明らかとなった。さらに、in vitro TNF-α刺激時にTAK1 siRNAで内在性TAK1発現をノックダウンすることにより転移促進作用が消失することを見出した。したがって、TNF-αの転移促進効果において、がん細胞内でのTAK1の活性化が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
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