研究概要 |
プロテインキナーゼC(PKC)は受容体刺激等の細胞外刺激に呼応して産生・濃度上昇がおこるジアシルグリセロール・カルシウムイオン等セカンドメッセンジャーにより酵素活性が上昇することが知られている。一方、細胞を過酸化水素処理することによってもPKCの酵素活性は上昇するが、この際、PKCはセカンドメッセンジャーによらない活性型となることが判明している。このことは、PKCの活性化機構が複数存在することを示唆している。そこで本研究ではPKC δの活性型変換に焦点を当てた解析を行い、PKC δのチロシン燐酸化による活性化の意義を検討するとともに、酸化ストレスによりPKC δ同士が会合することを見いだした。即ち、HeLa細胞においてセラミド刺激により誘導されるアポトーシスには、従来同定されているPKC δのチロシン燐酸化部位のうち311,332番チロシン残基の修飾反応が関与していることを明らかとした。一方、燐酸化を受けるチロシン残基を置換したPKC δ変異体が過酸化水素処理によりCOS-7細胞内で活性型となり、その際、PKC δ同士が会合していることが判明した。このことはPKC δにはチロシン燐酸化に加えて更に独立した活性調節機構が存在することを示している。今後、過酸化水素処理に伴うPKC δの会合部位の特定を行うとともに、会合したPKC δの燐酸化酵素活性について詳細に検討を行うことを計画している。
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