研究概要 |
cPGES/p23の活性調節メカニズムの解明を目指し以下の解析を行った。cPGES/p23は一次構造上多数のリン酸化されうる部位が存在する。ラット線維芽細胞ライゼートをホスファターゼで処理すると、無処理群と比べてPGES活性が顕著に抑制されることを見いだした。細胞を32P正リン酸でラベルした結果、cPGES/p23のリン酸化体が検出され、カルシウムイオノフォア刺激に伴ってリン酸化が促進した。ホスホアミノ酸分析により刺激の有無に関わらずリン酸化セリンのみが検出された。次に各種タンパク質キナーゼの阻害剤によるアラキドン酸添加あるいはカルシウムイオノフォア刺激した際のPGE2産生量への影響を検討した結果、カゼインキナーゼII (CKII)阻害剤DRBにより抑制が観察された。リコンビナントcPGES/p23をCKIIはin vitroでリン酸化し、cPGES/p23はリン酸化に伴い酵素活性が上昇した。そこでCKIIのdominant negative体を強制発現した細胞株を樹立した結果、酵素活性およびPGE2産生の有意な抑制が見られた。次に、CKIIによる想定リン酸化部位の変異体(S113A,S118A,S151G)を強制発現した細胞株を作製し、刺激依存的なPGE2産生の変化を検討した結果、S113AとS118A変異体発現株は外因性アラキドン酸添加によるPGE2産生ならびにカルシウムイオノフォア刺激PGE2産生が親株細胞レベルまで減弱した。一方S151G発現細胞は天然型PGES発現細胞と同レベルのPGE2産生を示した。従って、cPGES/p23の活性上昇に必要なリン酸化部位は113番目と118番目のセリン残基であることが示唆された。さらにcPGES/p23のリン酸化がhsp90との結合を促進することを見いだした。以上の結果から、cPGES/p23のSer113とSer118に対するCKIIのリン酸化がhsp90/cPGES複合体形成の促進、cPGES/p23の酵素活性の上昇を誘発し、PGE2産生が亢進することが想定された。
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