平成15年度に作成したtwo-hybrid systemを用いてラットおよびヒトのFABPとGSTT2とのタンパク質相互作用の解析を行った。その結果、ラットではFABPとGSTT2を含むベクターで大腸菌をトランスフォームした場合においてのみコロニーの形成が認められ両タンパク質が相互作用していることが確認された。しかしながら、このタンパク質相互作用はコロニー形成能から評価すると弱いものであると推測された。ヒトの場合も同様にFABPとGSTT2との間で弱いタンパク質相互作用が認められた。 HepG2細胞を用いてヒトGSTT2安定発現株(HepG2/GSTT2)を樹立した。本細胞株に対して酸化的ストレスを誘導し、コントロール細胞と比較することにより酸化的ストレスに対するGSTT2の役割を評価した。HepG2およびHepG2/GSTT2に対し種々の濃度の過酸化水素を暴露した場合、濃度依存的に細胞死の増加が認められた。しかしながら、HepG2/GSTT2はHepG2と比較して優位に過酸化水素による酸化的ストレスに対して耐性を示した。さらにクメンヒドロペルオキシドによる酸化的ストレスに対しても同様の検討を行った結果、過酸化水素の場合以上にHepG2/GSTT2はクメンヒドロペルオキシドによる酸化的ストレスに対して耐性を示した。以上の結果から、GSTT2は酸化的ストレスに対する防御機構として重要な役割を担っていることが明らかとなった。今後、HepG2/GSTT2にFABPを共発現させた細胞系の樹立を行い、酸化的ストレスに対してGSTT2およびFABPが協調的に働くことにより酸化的ストレス防御能が増強されるか否かについて検討する予定である。
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