研究概要 |
TIS11遺伝子は神経栄養因子によって誘導される初期応答遺伝子として同定されており,その翻訳産物であるTIS11蛋白質は,Cys-Cys-Cys-His型Zn^<2+>フィンガー構造を有している.最近,私共は,TIS11蛋白質が,その一次構造内に存在する核内移行シグナルおよび核外移行シグナルを介して核-細胞質間をシャトルすることを報告した.この研究の過程にて,ストレス条件下においてTIS11が細胞質に顆粒状に分布することを見出したので,今回,熱ストレス条件下におけるTIS11の細胞内局在について検討した.その結果,細胞に対して熱や酸化などのストレスを与えると,ストレス顆粒(stress granule : SG)と呼ばれる凝集体が細胞質に形成されることが報告されており,TIS11は熱ストレス条件下においてSGに局在することが判明した.また,TIS11のアミノ酸配列をN末端領域(1-101),Zn^<2+>フィンガードメインを含む中央領域(76-189),C末端領域(176-320)の3つの領域に分け,それぞれの領域のSGへの移行を解析したところ,Zn^<2+>フィンガードメインを含む中央領域においてSG移行活性が認められた.さらに,Zn^<2+>フィンガードメインにおいてZn^<2+>とキレートを形成するCys残基をAlaに置換した変異体はSGへは移行しなかった.以上のことから,TIS11がSGへ移行するためには,Zn^<2+>フィンガードメインにおいてZn^<2+>とのキレート配位が必要であることが示唆された.
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