本年度は老化に伴う発現量が変化するシナプトソーム糖蛋白質の同定の基礎実験として、2次元電気泳動、Con Aを用いたレクチンブロッティング、質量分析計を用いた老化に伴うラット大脳皮質可溶性画分糖蛋白質変化の同定及びその性状解析を行った。その結果、等電点4から7において、少なくとも14スポットの糖蛋白質が老化に伴って可溶性画分に増加する事が明らかとなった。それらは、Endoglycosidase H処理によって、Con Aとの反応性が失われる事から、アスパラギン結合型糖鎖による1修飾がなされていることが解った。更に、増加の見られたスポットを回収しnanoLC-ESI-Q-TOF/MSにより同定を試みたところ、これらのスポットの中で3スポットがリソゾームの蛋白質分解酵素であるcathepsin Dであることが明らかになった。 一方、膜蛋白質は一般的に疎水性が高く2次元電気泳動で解析出来ない場合がある。そこで分離精製する前のシナプスの糖蛋白質を全てプロテアーゼで消化して、そのペプチド混合物からからSepharose CL-4Bを用いて糖ペプチドを回収し、質量分析計で解析する方法の検討も行った。現在ヒト由来トランスフェリンなどの標準的な糖蛋白質約10pmolから糖ペプチドの回収、質量分析計による検出に成功しており、一部MS/MSによって、糖鎖部分のsequentialなfragment ionの検出にも成功している。これを用いて、老化に伴って発現量が変化する糖ペプチドを検出し、その糖蛋白質本体と糖鎖構造、更にその修飾部位を明らかにする予定である。 本研究から、glycoproteomicsの手法を用いた、シナプス糖蛋白質解析の技術面での問題が解決され来年度に向けて老化に伴うシナプス糖蛋白質変化が明らかとなる事が期待される。
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