我々は、ヒルシュスプルング病症候群がZFHX1B(Smad interacting protein-1 (Sip1)をコードする)の異常で発症することを初めて明らかにした。本研究は、本症の病態を分子レベルで明らかにするために、siRNAを用いて培養細胞及びマウスの初代脳培養細胞内のSip1の機能を阻害し、その結果生じる様々な遺伝子の発現異常や、神経細胞の形態変化等を明らかにすることを目的としている。 ZFHX1BをノックダウンするsiRNAの作製を行った。(1)4種類のSip1に特異的な配列のsiRNAをin vitroで合成した。これらのsiRNAを293細胞に導入し、Sip1の発現量をRT-PCR法により定量した。1種類のsiRNAが、Sip1の発現量を何も加えないコントロールに比べ約30%抑制していた。(2)ヒトSip1の開始コドンから約600bp領域の2本鎖RNAを作製し、Dicer酵素により約25merの断片にしたsiRNAを293細胞に導入した。Sip1発現量はコントロールに比べ、約60%抑制された。(3)9種類のsiRNA配列をpSUPERに挿入し、siRNAを細胞内で発現するベクターを作製した。また、Luciferaseの3'-非翻訳領域に、上記のsiRNAの標的となるSip1の配列を挿入したsiCHECKベクターも作製した。293細胞に上記のsiRNA発現ベクターとsiCHECKベクターを同時に導入後、Luciferase活性を測定し、siRNAの発現抑制効果を評価した。1種類のベクターが、コントロールに比べ約80%抑制していた。(3)で作製したsiRNAベクターは、sip1の機能を十分に阻害できることが明らかとなった。現在、マウスのP19細胞にsiRNA発現ベクターを導入し、神経細胞の形態変化の異常等を解析している。
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