抗腫瘍性ヌクレオシドはヌクレオシドトランスポーター(NT)によって細胞内に輸送される。本研究では、薬剤感受性とNT機能の関連性を検討した。 培養がん細胞では促進拡散輸送系(ENT)1-3のmRNAは恒常的にその発現が観察されたが、ENT4は特に大腸がん細胞株で高頻度に発現が観察された。能動的輸送系(CNT)は組織特異性や恒常的発現などは観察されず、ENTに比較して低発現であった。 また、8種類のヒトがん細胞を用い、抗腫瘍性ヌクレオシドの薬剤感受性と薬剤輸送量を検討した結果、NTのmRNAの発現量とヌクレオシドの細胞内輸送量に関連性は認められなかった。しかしながら、NTの阻害剤を用いて細胞内輸送量を制限すると、薬剤感受性が低下し、細胞内輸送量と薬剤感受性との間に明らかな関連性が認められた。 更に薬剤感受性との関連性をより明確にするためにGFPとの融合蛋白質としてENT1-4を培養がん細胞株に強制発現させた結果、ENT1および2は従来までの報告通り細胞膜への局在性が観察された。しかしながら、ENT3および4は細胞膜上ではなく細胞内の小器官で発現が認められた。つまり、薬剤が細胞内に輸送された後の細胞内での分布に関与し、細胞膜での輸送活性や薬剤感受性には関与しないことが示唆された。そこで、強制発現細胞株での薬剤感受性を検討した結果、ENT1およびENT2の強制発現細胞株では薬剤の感受性が増強した。しかし、ENT3やENT4を発現した細胞株では薬剤の感受性に変化は認められなかった。ENT3およびENT4が細胞内小器官に発現し、そのヌクレオシドの輸送能にいかなる生物学的意義があるのかは不明ではあるが、抗腫瘍性ヌクレオシドの細胞内輸送(薬剤感受性)とは直接関係しないことが明らかとなった。 これらの結果の一部は現在、論文として投稿準備中である。
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