研究概要 |
SAHHの単結晶は、反応生成物であるAdoの存在下で、クエン酸ナトリウムを沈殿剤とした場合に得られた。つくば市高エネルギー加速器研究機構のPF-AR NW12において2.4Å分解能の回折強度データを収集した。結晶学的パラメータは、斜方晶系、空間群P2_12_12_1、格子定数a=77.09Å,b=86.15Å,c=333.8Åであった。ヒト由来SAHH(HsSAHH)をサーチモデルとした分子置換法により、位相決定を行い、PfSAHH/Ado複合体の結晶構造解析に成功した。 HsSAHHとPfSAHHの構造比較により、活性部位(Ado結合サイト)にHsSAHHには存在しない「くぼみ」があることが明らかとなった(Tanaka et al.,J.Mol.Biol.343,1007-1017(2004))。既存の各種阻害剤のPfSAHH及びHsSAHHに対する阻害活性データは、PfSAHHに存在する「くぼみ」が種選択的阻害剤をデザインするための標的となることを示唆している。 SAHHの選択的阻害薬であるNoraristeromycinのアデニン環2位にフッ素を導入した2-F-NAMは、PfSAHHに対する阻害能は維持していたがHsSAHHに対する阻害能を失っている(立体障害が原因と推定される)。そこで、PfSAHH/2-F-NAM複合体の立体構造決定により、アデニン環2位への官能基導入が実際にPfSAHH特有の「くぼみ」を埋め、選択性に寄与しているのかを検証するため、我々はPfSAHH/2-F-NAM複合体の結晶化を行い、結晶が得られた。しかし、今のところ良好な回折データが得られておらず、構造解析には至っていない。良質な結晶が得られ次第、2-F-NAMの結合部位を確認し、阻害剤の種選択性向上に役立つ立体構造情報を得たい。
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