1.インディルビンのハロゲン置換体の合成とヒトAh受容体結合活性 インディルビン(Idb)は、ヒト尿中から単離された内因性Ah受容体リガンド候補物質である。そこで、Idbのベンゼン環部位へのハロゲン置換によるAh受容体親和性への影響を検討する目的で、5位及び5'位のハロゲン置換体を合成し、ヒトAh受容体発現酵母株を用いたレポーター試験によりリガンド活性を求めた。その結果、IdbはEc_<50>が約1nMと非常に高いリガンド活性を示したが、5位及び5'位へのハロゲン置換では何れも親化合物であるIdb自身に比べリガンド活性が同じか低下する傾向が見られた。特に、F<<Cl<Brの順にリガンド活性が低下する傾向があり、Idbの5位及び5'位へのハロゲン置換では、脂溶性の増大或いは分子サイズの増大によりヒトAh受容体親和性が低下することが示唆された。 2.Idb類のin vivoでのCYP1A誘導阻害活性 Idbはヒト肝癌由来細胞においてnM以下の低濃度でCYP1A1を誘導するが、その誘導の程度はダイオキシンなどに比べて極めて弱く、一過性であることが報告されており、IdbはAh受容体に対する部分アゴニストである可能性が考えられる。そこでマウスを用いてIdb類のCYP1A誘導活性を検討した結果、Idb類は単独ではCYP1A誘導能を示さず、さらに、Idb及びその5位フッ素体(5-F-Idb)はベンズピレンとの併用によりCYP1A誘導阻害活性を有している事が明かとなった。 次に、マウス末梢血小核試験により、Idb及び5-F-Idbのベンズピレンに対する抗変異原性を検討した結果、Idbでは若干の抑制効果が見られ、5-F-Idbでは有為にベンズピレンによる小核誘発を抑制した。現在、遺伝子導入マウスを用いた変異原性試験により、5-F-Idbの抗変異原作用について詳細に検討中である。
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