研究概要 |
本研究課題では、転写因子MRE-binding transcription factor (MTF)-1を特異的に阻害し、その際の表現型からMTF-1の機能を探ることを目的としている。本年度は、MTF-1を特異的に阻害する手法の確立、その作用機序解明および阻害効果の評価を目指した研究とMTF-1活性を変動する要因について検討を行い、以下の成果を得た。MTF-1の種々変異体を作成してMTF-1活性阻害効果を培養細胞を用いて検討し、MTF-1のC末端欠失体がMTF-1活性阻害能を有していることをつきとめた。阻害機構についてin vitroにて検討したところ、DNA結合における競合阻害であることが判明した。この阻害効果はC末端欠失型MTF-1量依存的に認められ、培養細胞レベルでMTF-1活性を1/10にまで低下することが可能であった。現在、C末端欠失体を細胞内に容易に導入するため、アデノウイルスベクターを構築している。一方、別機構でのMTF-1阻害を目指し、MTF-1を認識する一本鎖抗体の作製を試みた.しかしながら,抗原としてGST融合タンパク質、部分ペプチドのいずれを用いても良好な免疫交差性を有する一本鎖抗体を得られず、一本鎖抗体発現ベクター導入によるMTF-1阻害が出来なかった。抗原の再選定を行う必要があるMTF-1活性を変動する要因については、過酸化水素などの酸化ストレスと重金属結合タンパク質、メタロチオネインの共存がMTF-1活性に影響を与えることを明らかにした。今後、MTF-1が酸化ストレスに対する生体応答において、どのような役割を担っているか、C末端欠失体発現アデノウイルスベクターなどを利用して研究する予定である。
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