研究概要 |
1 培養ケラチノサイトにおけるAhレセプターの機能解析 XREtk-Luc発現ベクターを導入したHaCaT細胞を培養し、レポーター活性を経時的に測定した。活性はsubconfluenceで最大、その後confluenceでは減少した。細胞のまきこみ数を変えて培養し、1日後に測定したレポーター活性は、細胞数に逆相関した。また、高密度に培養された細胞をトリプシンではがし、低密度にうえ代えると、時間と共に活性は上昇した。これらより、XREを介した転写調節は低密度では高く、高密度では低くなることが示唆された。さらにレポーター活性を可視化するため、XREtk-GFPを導入したHaCaTをin vitro wound healingの実験に用いた。細胞をscrapeした部位ではGFPの再活性化がみられた。これらより、AhRの転写調節活性は、細胞の密度により調節されることが示唆された。 2 Ahレセプターの細胞内局在の調節 a)AhR局在を調節する培養条件の検討 細胞密度がAhRの局在に与える影響を免疫染色で検討した。低密度では細胞質+核に、高密度では細胞質が染色された。また、高密度にある細胞の培養液を低カルシウム培地に交換すると、2時間後にはAhRは核へ移動した。これらより、AhRの局在も、細胞密度に影響されることが示され、特に細胞間接着に由来するシグナルの関与が示唆された。 b)NLS,NES周辺のリン酸化について ヒトAhRのNLS近傍のSer12、Ser36はin vitroでPKCでリン酸化された。これらSerをAspに置換し、リン酸化Serを模した変異型AhRの核移行活性は抑制された。またNES領域に位置するSer68のAsp置換は、核外移行を抑制した。これらの結果より、局在化シグナルのリン酸化は、AhRのtranslocationを負に制御する機能をもつことが示唆された。 3 AhRと相互作用する蛋白質の検索 酵母の2-hybridシステムにおいて、AhRと特異的に結合する蛋白質を、HaCaTのライブラリーからスクリーニングしている。これまでにおよそ20万クローンをスクリーニングしたが、真に陽性と思われるクローンの分離には至っていない。今後もスクリーニングを継続する予定である。
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