研究概要 |
本年度は、肝取り込みトランスポーターの寄与率の検討を進めるため、特異的基質の探索を、特に肝臓に限局した発現が認められる、OATP2,OATP8について行った。その結果、基質に関しては、Estrone-3-Sulfate(E-Sul)がOATP2,cholecystokinin octapeptide(CCK-8)がOATP8の選択的な基質として働く事を確認した。次に、ヒト凍結肝細胞と発現系における選択的基質の輸送クリアランスを比較することにより、肝細胞と発現系のトランスポーター発現量の相対比を算出し、肝細胞におけるEstradiol-17β-glucuronide, HMG-CoA還元酵素阻害薬であるpitavastatinの取り込みに占めるOATP2,OATP8の寄与の見積もりを行った。その結果、両化合物ともOATP2,OATP8の良好な基質であったが、3ドナー由来のヒト凍結肝細胞における取り込み能は、いずれにおいてもOATP2,OATP8両トランスポーターで説明できる事を示唆し、さらにOATP2が90%程度の寄与を持つ事を明らかにした。また、直接Western blotのバンド濃度で発現量を比較することで算出した寄与率も上記の結果と一致したことから、選択的基質を用いた方法論の妥当性が示された(本結果は学会発表済、投稿中である)。また、肝機能改善薬ウルソデオキシコール酸に関しても同様の検討を行っている。今後、より多様な化合物に対して寄与の評価を試みる予定である。 また、来年度目標である排泄トランスポーターの寄与評価のため、OATP2/MRP2,OATP2/MDR1,OATP2/BCRP発現系の構築も完了しており、Western blot、免疫染色にて発現の確認、典型的基質の経細胞細胞輸送活性を確認しており、来年度から行う検討の準備も完了している。
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