【目的】緊急安全性情報や厚労省からの通達によって、インフルエンザ脳炎・脳症の発症とその重症化への一部の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の関与が指摘されている。本症の特徴は、脳内でウイルスが検出されないこと、血清・脳脊髄液中において高濃度の炎症性サイトカインが検出されること、脳血管の損傷が認められることであり、脳血管透過性の上昇や血液脳関門(BBB)の破綻と密接な関わりがあると考えられる。本研究では、in vitroのBBBモデルのtight性に対する炎症性サイトカインやprostaglandin E_2 (PGE_2)の作用とそれに及ぼすNSAIDsの影響について検討した。 【方法】ウシ脳毛細血管内皮細胞とラットアストロサイトをTranswell^<TM>に共培養させたBBBモデルを作成した。IL-6を単独またはTNFα・IL-1βと併用添加し、経時的にTranscellular endothelial electric resistance (TEER)値を測定した。PGE_2を添加し、経時的にTEER値を測定した。ジクロフェナクナトリウム(DCF)またはSC-560(COX-1選択的阻害剤)の存在・非存在下においてTNFαまたはPGE_2の添加がTEER値に与える影響を検討した。 【結果・考察】TEER値はIL-6により濃度依存的に低下し、TNFα・IL-1βの併用によりさらに低下した。PGE_2の添加によりTEER値は低下し、DCFの存在下ではその低下は増強された。しかし、SC-560の存在下ではその増強は観測されなかった。以上より、炎症性サイトカインとPGE_2はBBB透過性を上昇させる作用を有していること、また既にPGE_2が産生している炎症状態おいて後からDCFが投与された場合にはPGE_2のBBB透過性の上昇作用が増強される可能性があることが示唆された。
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