研究概要 |
胆汁鬱滞時の小腸トランスポーターの発現変化に薬物輸送機能の変化が伴うかを胆管結紮ラット小腸組織を用いて検討した。トランスポーター発現は結紮4週間でmrp2 mRNAが減少した。mrp2の基質であるパラアミノ馬尿酸の輸送も減少し機能的な低下を伴っていた。一方、asbtは結紮初期において増加したが、特異的基質であるタウロコール酸の小腸組織輸送は変化せず、機能的な変動は見られなかった。 ラットにおけるトランスポーター発現変動の要因を明らかにするため、小腸上皮モデル細胞であるCaco-2細胞を用いて検討した。胆管結紮ラットにおいて変動した内因性物質に着目した。胆管結紮ラットでは血漿中総胆汁酸,総ビリルビン,サイトカイン(interleukin 1β [IL-1β],tumor necrosis factor α [TNF-α])が増加していた。これらの内因性物質をCaco-2細胞に添加して6〜24時間培養し、トランスポーターmRNA発現量の変動をみた。胆汁酸成分処理ではタウロコール酸でmrp2およびasbt mRNA発現量に差はなく、コール酸で増加傾向がみられたものの対照群に比べて有意差はなかった。ビリルビン処理ではmrp2 mRNA発現量に有意差はみられなかったが減少傾向を示した。サイトカイン処理では、TNF-α処理で6時間に比べて24時間処理でmrp2 mRNA発現量が減少し、24時間処理ではTNF-α濃度依存的にmrp2 mRNA発現が減少する傾向を示した。IL-1β 6時間処理では濃度依存的に増加したが,24時間処理では変化が見られなかった。TNF-αとIL-1βを同時に処理した場合,6時間処理でMRP2 mRNA発現量が減少する傾向を示した。以上より、胆管結紮ラットにおける小腸トランスポーター発現量の変動にTNF-αおよびビリルビンが影響を与えている可能性が示唆された。
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