腎有機イオントランスポータ群は薬物の尿中排泄において重要な役割を果たしている。薬物腎排泄における各トランスポータの重要性や機能分担を明らかにすることを目的として、ヒト有機イオントランスポータの機能について解析した。 正常腎組織ではhOAT1とhOAT3が他の薬物トランスポータと比較して高い発現量を示しており、薬物腎排泄において主要な役割を果たすと考えられる。これらトランスポータの機能解析を効率的に進めるため、前年度に構築したhOAT1及びhOAT3安定発現細胞(HEK-hOAT1及びHEK-hOAT3)を用いた。これまでの検討において、セファゾリンのhOAT1とhOAT3に対する阻害強度はほぼ等しいものの輸送特性が異なり、hOAT3によって輸送されること、セファゾリンの腎排泄がhOAT3発現量と相関することなどを見出した。本年度はさらに8種類のセフェム系抗生物質の輸送について検討したところ、hOAT1及びhOAT3の輸送活性を濃度依存的に阻害した。しかし検討した8種全ての抗生物質がhOAT1よりもhOAT3によって輸送された。また、エストロン硫酸などもhOAT3に顕著に輸送されるものの、パラアミノ馬尿酸や葉酸などはhOAT1によって効率よく輸送されることが明らかとなった。さらにメトトレキサートなどはhOAT1とhOAT3の両方で輸送された。以上の結果から有機アニオントランスポータhOAT1とhOAT3には基質認識特性が異なり、薬物ごとに腎排泄における寄与率が異なると推察された。 また遺伝子多型の有機イオントランスポータに及ぼす影響について検討した。腎疾患患者群の解析からhOAT3遺伝子上にアミノ酸変異を伴う遺伝子多型が見出された。この変異について変異体を作成し輸送活性について検討した。その結果、wild typeと比較してエストロン硫酸やフェノールスルホフタレイン輸送は低下したもの、セファゾリンの輸送は上昇傾向を示した。従って、このアミノ酸変異によってトランスポータの機能が変化することが示唆された。 以上の結果は腎有機アニオントランスポータの機能特性を解明するための有用な情報である。
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