2004年にClinical Cancer Research 10 pp762に発表した従来の投与方法と比較し安全かつ効果的な投薬が可能となった投与方法を基盤に、本年度はこれらに時間楽理学的手法を用い更なる副作用軽減を試みた。docetaxelおよびadriamycinそれぞれに関し投薬時刻の違いによる副作用への影響を評価した。マウスを対象とした実験で、docetaxelでは9:00、adriamycinでは21:00に1日の中で副作用が最も軽減できることが明らかとなり、また副作用が軽減できる時刻は両薬剤でおよそ12時間異なっていた。この成果を昨年構築した投薬方法に適応し、副作用および抗腫瘍効果への影響を評価した。抗腫瘍効果については、投薬時刻を考慮しても効果の増減は認められなかった。しかし、副作用に関して、両薬剤とも副作用を軽減できる時刻に投薬することで、白血球減少などの副作用を顕著に軽減できることが明らかとなった(Cancer Res.投稿準備中)。 また、昨年の同報告からDOCをADR投薬の約12時間先に投薬することで、ADR誘発心毒性を軽減できることが明らかとなっていた。その機序について検討し、ADRによって惹起される心組織中フリーラジカルの減少がこの心毒性軽減に大いに寄与していることを明らかにした。現在、マイクロアレイを実施し、DOCによるフリーラジカル軽減の作用様式を分子生物学的側面より追求している。 以上より、癌化学併用療法における投薬方法は、今後改善の余地があることが示唆された。現在我々は、単に投薬方法の良し悪しを検討するのではなく、副作用および抗腫瘍効果の機序解明を通して、薬剤併用における投薬タイミング設定の根拠となる因子の同定に着手している。これらの同定によって、EBMのもとより効果的な癌化学併用療法の実践が可能になると考える。
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