研究概要 |
食品成分中のポリアミンによる高分子物質の腸管吸収に及ぼす影響を探索することを目指した研究を行い、以下のような新しい知見を得た。1.スペルミン共存下での水溶性高分子物質の膜透過性の検討:in situループ法およびin vivo実験法により、スペルミンによる水溶性高分子物質の腸管吸収に及ばす影響を観察した。モデル高分子物質として4.4 kDaの分子量をもつfluorescein isothiocyanate dextran (FD-4)を用いた。ループ法は、ラット空腸部に10 cmのループを作成した。薬物投与後、血液サンプルを頚静脈より経時的に採血し、FD-4の血中濃度推移を観察した。その結果、FD-4単独(コントロール)に比べ、スペルミン(15 mM,1 ml)のループ内への同時投与では、投与約1時間後からFD-4の血中濃度の上昇がみられた。この吸収促進効果は、ラットへの経口投与によるin vivo実験法でも観察された。作用発現機構は明らかではないが、スペルミンが水溶性高分子薬物の腸管吸収に対して影響を与えることが示唆された。現在ディフュージョンチャンバーを用いての薬物透過実験を検討中である。2.タンパク質の化学的断片化に伴うC末端蛍光標識ペプチドの合成の検討:ペプチドの消化・吸収の経過を検討する上で、高感度で検出できる蛍光標識ペプチドは有用であるNTCB (2-nitro-5-thiocyanobenzoic acid)はペプチド分析におけるシステイン残基のN端側切断試薬であるNTCBを用いたタンパク質断片化反応を利用しての蛍光標識ペプチドの合成を検討した。モデルタンパク質としてオボアルブミンを選び種々条件検討を行った。その結果、オボアルブミンをNTCBで処理後、蛍光アルキルアミンであるN-(2-pyridyl)-1,4-diaminobutaneと反応させたところ目的のC末端蛍光標識ペプチドが得られた。この手法は蛍光標識ペプチドの簡便な合成法として有用であると考える。
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