これまでに私たちは、臨床で報告されたHMG-CoA還元酵素阻害薬セリバスタチンと免疫抑制薬シクロスポリンの相互作用がトランスポーターを介したセリバスタチンの肝取り込みに対するシクロスポリンによる阻害が起因していることを明らかにした。今回、ラットを用いて相互作用のメカニズムとしての肝取り込み阻害の寄与および取り込み阻害の阻害様式などを検討した。この結果、ラットにこれらの2薬を同時投与した場合のin vivoでの相互作用は、肝取り込み阻害だけで説明することができることが明らかになった。また、取り込み阻害は競合阻害であることがわかった。また、臨床で死亡例も含む重篤な副作用が報告されたセリバスタチンとフィブラート系高脂血症治療薬ゲムフィブロジルの相互作用についても、メカニズムの解析を行った。この解析の結果、ゲムフィブロジルおよびそのグルクロン酸抱合体が肝取り込み及びCYP2C8を介した代謝を阻害すること、臨床血中濃度では阻害し得ないことを明らかにした。しかしながら、ゲムフィブロジルのグルクロン酸抱合体はラットにおいてはトランスポーターを介して肝に取り込まれ高濃度で肝内に存在することが報告されている。肝内に集積しているゲムフィブロジルのグルクロン酸抱合体の濃度を考慮すると、この代謝物が細胞内でセリバスタチンの代謝を阻害する可能性があることが明らかになった。一方で、ゲムフィブロジルの主代謝物であるM3には取り込みおよび代謝のいずれに対しても、阻害活性がほとんどないことが明らかになった。
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