○HMG-CoA還元酵素阻害薬とゲムフィブロジルの相互作用機序に関する研究(1) 私たちは、これまでの研究でゲムフィブロジルの代謝物ゲムフィブロジルグルクロニドがトランスポーターを介して肝臓に能動的に取り込まれることによって^<14>C標識したゲムフィブロジルからグルクロン酸抱合体を生成し、分離して、そのOATP1B1および1B3への取り込み機能を観察した。この結果から、ゲムフィブロジルグルクロニドがOATP1B1を介して肝臓内に取り込まれている可能性があることを明らかにした。 ○HMG-CoA還元酵素阻害薬とゲムフィブロジルの相互作用機序に関する研究(2)およびシクロスポリンとの相互作用機序に関する研究 これらの薬物によるトランスポーター阻害が、可逆的な競合阻害ではなく、preincubationで増強されるような不可逆的な阻害であるという仮説を立て、阻害剤存在下でトランスポーター発現系とpreincubationを行うことでその検証を試みた。この結果、ゲムフィブロジルグルクロナイドについては、preincubationによる増強が見られないものの、シクロスポリンにおいては見られた。このメカニズムについては、今後検討したいと考えている。 ○HMG-CoA還元酵素阻害薬とゲムフィブロジルの相互作用機序に関する研究(3) ゲムフィブロジルグルクロニドによる代謝阻害について、mechanism-based inhibitionまたは不可逆的な阻害の可能性を考えて、preincubationによる代謝阻害の増強について、検討を行った。しかしながら、preincubationによる阻害効果の増強は認められなかった。また、ゲムフィブロジルとの相互作用が肝臓に能動的に取り込まれて、濃縮されることにより、強くなるという仮説を検証する目的で、ヒト肝ミクロソームおよびヒト肝細胞を用いてセリバスタチンの代謝実験を行い、それらに対するゲムフィブロジルグルクロナイドの阻害効果について、検討を行った。この結果、ヒト肝細胞を用いたときの方が、低いIC50値での阻害がみられた。このことから、阻害剤のトランスポーターを介した能動的取り込みによる濃縮によって、阻害効果が強くなっているという可能性が支持された。
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