本研究では、p21遺伝子による関節軟骨疾患の治療法を確立することを目標とする。p21遺伝子導入により軟骨細胞の分化が促進されるか否かを確認するために、平成16年度では、平成15年度においてテトラサイクリンプロモーターの制御によってp21遺伝子が高発現するベクターを構築した発現ベクターを前軟骨細胞株ATDC5に安定に導入し、得られたクローン20個について解析を行った。遺伝子安定導入株をそれぞれテトラサイクリン存在下または非存在下で培養したところ、唯一クローン8においてp21mRNA発現の増加が認められた。また、RT-PCRの結果からp21発現による軟骨分化マーカーの発現上昇が認められる傾向にあった。 関節軟骨疾患に伴う炎症性サイトカイン(IL-1beta)をATDC5細胞の軟骨分化の系に加えp21の発現変動を解析したところ、p21mRNA発現の顕著な減少が認められた。また、それに伴う軟骨分化マーカーの顕著な発現抑制が認められた。よってクローン8において軟骨への分化誘導を行った培養系にIL-1beta存在下でp21の発現誘導を行い、それによる軟骨破壊を抑制できるか否かについて検討を進めている。
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