細胞の極性は細胞の機能に重要な役割を持つ。細胞内で新規に合成された蛋白質はTGN(トランスゴルジネットワーク)等において各々異なる極へ輸送するための小胞に分配、濃縮された後、目的の極の細胞膜へと運ばれる。この方向性を持った輸送を選別輸送と呼んでおり、細胞極性の形成維持に必須な役割を担うことが知られている。近年、選別輸送に重要と考えられている分子として、低分子量GTP結合蛋白質であるrab蛋白や、SNARE蛋白等が同定されているが、組織や個体におけるこれら分子の役割は不明である。 そこで本研究では、gene targeting法を用いて、選別輸送関連分子(rab蛋白であるrab8)の遺伝子欠損マウスを作製し解析することで、細胞極性の形成、維持や個体の生命活動におけるrab8の役割を解明しようとしている。具体的にはCre-loxPシステムを用いることで全身のみならず、組織、時期特異的gene targetingを行い、特定細胞種における異常を解析する予定である。現在、rab8a遺伝子欠損マウスを得るための研究が以下のように進行している。 マウスRab8の遺伝子座のゲノムDNA断片にloxP配列を挿入した相同組み替え用ベクターを3種作製した。これらのベクターをES細胞に導入後、サザンブロット法により目的の相同組み替えを起こしたクローンを選別した。その結果、相同組み替えを起こしたクローンを単離することに成功した。これらのESクローンをマウス胚にインジェクションし、キメラマウスを作製した。このマウスの子孫がRab8-floxedマウスとなり、次年度以降は、全身または組織特異的なRab8遺伝子欠損マウスの作製に用いる予定である。
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