ラット胚の肝芽組織における肝芽細胞と間葉系細胞および細胞間基質との相互作用を検討する前段階として、肝芽組織における間葉系細胞のマーカー分子と細胞外基質、細胞接着分子の発現を免疫組織学的手法を用いて検討した。 標本はラット11.5日胚、12.5日胚、13.5日胚、14.5日胚、16.5日胚を4%パラフォルムアルデヒドで固定した凍結切片を用いた。一次抗体として抗デスミン、ビメンチン、α平滑筋アクチン(αSMA)、グリア線維性酸性蛋白質(GFAP)、αフェト蛋白質(AFP)、神経細胞接着分子(NCAM)、フィブロネクチン、ラミニン、インテグリンα3、α4、α5、α6β1、β1、β4、β5抗体を用いた。 それぞれの胚の肝芽組織においてαSMA、GFAPの発現は実質内には認められなかった。デスミンとビメンテンは間葉系細胞に発現が認められたが、ビメンチンの方がデスミンよりもより広範囲の間葉系細胞に発現が認められた。NCAMはビメンチン陽性細胞に発現が認められ、AFP陽性の肝芽細胞には発現が認められなかった。細胞外基質であるフィブロネクチンとラミニンは基質部分と間葉系細胞および一部の肝芽細胞に発現が認められた。ラミニンレセプターであるインテグリンα6β1は肝芽組織の被膜部分に発現が確認できたが、実質内には発現していなかった。その他のインテグリンに関しては、免疫組織化学染色自体が成功しなかった。 今後の実験計画としては、α6β1以外のインテグリンに関して、固定方法を変更した標本で発現を検討し、NCAMに関しては胚の組織培養系を用いて、NCAMの阻害が肝芽組織の発生にどのような影響を与えるかを検討する。
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