研究概要 |
現在までに明らかにしたことは以下の通りである。 1,末梢神経損傷後に分泌型のセリンプロテアーゼであるtissue type plasminogen activator (tpA),urokinase plasminogen activator (uPA) mRNAが後根神経節において発現誘導され、その発現細胞が主に痔痛受容を担うタイプのニューロンであることがわかった。これらは共に末梢神経損傷後24時間以内に有意に発現誘導され、損傷後3日をピークとすることがわかった。また、tPAを発現しているニューロンは再生関連分子であるgrowth associate potein 43 (GAP-43)と高率に共存を示し、末梢神経再生を含んだ形態変化に関与している可能性を見いだした。 2,後根神経節で発現誘導されたtPA, uPAのうち中枢へ運ばれるのはtPAであることを免疫組織化学により明らかにした。免疫陽性は脊髄後角I-II層のプレシナプスに検出され、酵素活性の存在がシナプス分泌によるものでtPAの活性はシナプス周囲環境の改変・修飾である可能性をしめした。 3,tPAの酵素活性を特異的に抑制する薬剤であるtPA-STOPの髄腔内慢性投与により、末梢神経損傷後の脊髄後角ニューロンの興奮性の増加を抑制した。興奮性のマーカーとして末梢神経の電気刺激によるc-fos蛋白の発現を指標として使用した。 4,同様に慢性投与したtPAの酵素括性阻害剤は末梢神経部分損傷モデルラットの疼痛行動を有意に抑制し、細胞外のタンパク分解活性が疼痛発現の端緒であることを明らかにした。
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