神経栄養因子の活性評価は主にin vitro系で行われている。本研究は生体内で外因性に投与した神経栄養因子に対して応答する神経細胞を同定する簡便な方法を確立する事を目的とし、ラット足底へ神経栄養因子を投与後、脊髄前角・後根神経節(DRG)細胞等、投与部を支配する神経細胞がc-Fosなどのタンパクの発現誘導を起こすか杏かを詳細に検討するものである。 今年度は、当初計画に従い神経栄養因子としてNGFおよびGDNFについて検討を行った。 新生ラット足底にNGF(5〜200ng)を投与した場合、投与後10時間後に第4〜第5腰椎レベルの少数のDRG細胞がc-Fos陽性像を示す事を確認した。しかし、脊髄前角運動神経細胞には何の変化も見いだされず、投与量による変化も見られなかった。 一方、GDNFを投与群では、DRGではNFG同様第4〜第5腰椎レベルの少数の神経細胞がc-Fos陽性を示したが、脊髄においてはNGFと異なり多数の前角運動神経細胞にc-Fos陽性像が観察された。また、投与量5〜10ngでは、およそ支配領域に一致する投与側のDRG・脊髄前角細胞が陽性を示したが、50ng以上の投与では対象側を含め観察した殆どの脊髄前角細胞が陽性を示した。この反応は投与後12時間で最大になった.また、投与前に坐骨神経を切断する実験モデルでは低容量投与時の反応は抑制したが、高容量投与時の反応は影響されなかった。これは、低容量の場合、GDNFの効果が神経性に軸索を逆行輸送されニューロンのc-Fos発現に影響を与えたものであると考えられ、一方高容量の場合は血行性に働いた可能性を示唆している。 即ち、GDNFの場合は至適投与量10ng、足底投与後10〜14時間後という条件において、投与部位支配領域に相当する脊髄前角細胞等のc-Fos発現が本研究の目的を達成する指標となりうることを明らかにしたと考えている。
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