研究概要 |
細胞-細胞外マトリックスインタフェイスにおけるMT1-MMPの活性制御機構の解明は癌を始めとした病態のみならず形態形成機構を理解する上で重要である。そこで本研究では新たに発現クローニング法を開発し、細胞浸潤・運動に関連したMT1-MMP活性制御分子の同定を試みた。MT1-MMPの酵素活性としてはこれまでにPro-MMP2の活性化、細胞外マトリックスの分解および自己分解が知られている。近年これらの活性の上昇にはMT1-MMPの局在化とそれに伴うオリゴマー形成が重要であると考えられている。そこで我々はMT1-MMPの自己分解を指標とした。MT1-MMP活性検出系の確立を行った。方法としてはMT1-MMP触媒部位をMMP-9触媒部位に置換したキメラタンパク発現プラスミド(レポータープラスミド)を構築し、自己分解に伴う細胞外ドメインの培地中への放出をゼラチンザイモグラフィーによりモニターする系を確立した。このキメラタンパクは、1.MT1-MMP存在下において選択的に切断を受けること、2.この切断がTIMP-2,3により阻害されるがTIMP-1では阻害されないこと、3. MT1-MMP発現細胞であるHT1080細胞への導入により切断が起こること、4.レポータータンパク安定発現HT1080細胞に対するConA刺激やCollagen Iによる刺激により切断が促進されることから既知のMT1-MMP活性制御に関わる刺激により同様の制御を受けると考えられた。したがって本レポータータンパクはMT1-MMPのレポーターとして十分機能しうるものと考えられた。 このレポーターを用いたスクリーニングにより、活性抑制因子としてTIMP-2,-3,機能未知遺伝子、レポーター遺伝子を直接切断するタンパクとしてCathepsin、 MSPM、MT2-MMPなどを同定した。
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