逐次開口放出という分泌様式は、広範な細胞種類において用いられていることが近年明らかになってきている。そこで、本研究はこの様式が最も顕著に現れる膵臓外分泌腺において、その特徴を十全に活用し、画像解析によりその成因を分子的なレベルから明らかにしようとするものである。そこで、本年度は、膵臓外分泌腺のインタクトな標本を用いて逐次開口放出とSNARE連関蛋白質の同時化可視化を行うために、共同研究者によりマウス膵臓組織より、RT-PCR法を用いて、細胞膜に局在し、逐次開口放出を担うと予測している膜タンパク質SNAREのcDNAを得た。そのPCR産物は両側に制限酵素サイトを挿入し、汎用的なプラスミドへとサブクローングを行った。さらに、点在は緑色蛍光タンパク質GFPの変異体(EGFP-C3)のベクターのマルチクローニングサイトへ制限酵素とライゲーションを用いて挿入に成功し、現在、点突然変異の無いことを確認している。一方、SNAP23と結合することにより、開口放出を引き起こすと考えられているsyntaxin2について、EGFPを同時発現するプラスミドを、パーティクルガンを用いて、マウス膵臓外分泌腺細胞の初代培養標本に遺伝子導入した。この時、同時に、SNAP23との結合に重要と考えられているzero-layerに点突然変異を導入し、水素結合ができなくなったミュータントの遺伝導入も行った。これら初代培養細胞標本を水溶性蛍光色素を含む細胞外液中で分泌誘因刺激を与え、単一の開口放出現象を2光子断層イメージングにより可視化解析を行った。その結果、前者の過剰発現は、分泌顆粒の開口放出反応自体には全く影響を与えなかったものの、後者を過剰発現させた細胞は分泌反応自体が抑制されており、その程度は、GFPの発現量と正の相関があることが明らかになった。このことから、Syntaxin-2が逐次開口放出の分子機構に必須の要因であることが判明した。現在、さらにSNAP23の同位体であるSNAP25やアクチンの役割についても同様の実験・検討を進めている。
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