研究概要 |
本研究は2光子断層イメージングにより膵臓外分泌腺細胞における融合細孔形成の分子機構を可視化解析法の確立と応用を目指して実施した。その結果、本年度は次の成果をあげた。1.前年度に引き続き、水溶蛍光色素を用いて融合細孔形成現象とSNARE分子の側方拡散の因果関係を検討した。SNAP23-EGFPを発現するプラスミドを作成した。この融合タンパク質を発現するようにcDNAを組み込んだアデノウィルスを作成し、感染により膵臓外分泌腺初代培養腺房標本に遺伝子導入を行ったところ、腺腔膜上にSNAP23が局在することが明らかになった。さらに、アセチルコリン刺激を加えた場合、盛んに逐次開口放出が観察され、その開口放出を起こした分泌小胞膜状にSNAP23-EGPが側方拡散により再配置していく様子が観察された。これにより逐次開口放出がt-SNAREの側方拡散による可能性が高まった。(論文準備中)2.また、EGFP-β-アクチンを発現するアデノウィルスを用いることで、開口放出におけるアクチンの役割を明らかにした。特に、開口放出小胞に固有に生じるアクチン被覆を発見し、成果を出版した(J.Biol.Chem.,2004)。このアクチン被覆の破綻が急性膵炎の病因となる可能性を指摘した。また、基底膜でアゴニスト依存性のアクチン被覆が起きる事も見出した(論文準備中)。3.膵臓外分泌腺のカルシウム依存性塩素チャネルの機能分布をケイジドカルシウム試薬の2光子励起によりサブミクロンの解像で解明。狭い腺腔膜に高い発現が示唆された。腺腔側壁膜にも弱いながらも発現の可能性があり、push-pullモデルが支持される可能性が高まった(論文準備中)。4.鼻腺上皮組織においてカルシウム波動、逐次開口放出と溶液輸送を可視化(Cell Calcium, in press)。膵臓外分泌腺と異なり溶液輸送が開口放出に先行する。
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