研究概要 |
細胞容積調節能は、細胞にとって必要不可欠な機能の一つであり、細胞死などの様々な過程に関与することが分かってきた。最近の研究から、アポトーシス性容積減少(apoptotic volume decrease : AVD)が、細胞にアポトーシスを誘導する極めて重要な現象であり、それは主にK^+チャネルとCl^-チャネルの活性化によるイオン流出で為されていることが明らかとなっている(前野ら、PNAS,2000)。しかしながら、そのメカニズムに関しては未知であることから、本研究では、このAVDメカニズムの全容解明を目的とした。HeLa細胞を用いた全細胞記録により、ミトコンドリア系(staurosporine : STS)やデスレセプター系(FasとTNFα)アポトーシス誘導剤が共にCl^-電流を活性化することを見出した。そのチャネルの性質は、外向き整流性、脱分極電位での不活性化、容積感受性、細胞内ATP依存性などの点で、これまで報告されている容積感受性Cl^-チャネルと同一であった。またデスリガンド(FasとTNFα)では起こらないが、STSが急速に細胞内活性酸素種(reactive oxygen spiecies : ROS)を産生した。ROSスカベンジャーやNADPHオキシダーゼ阻害剤は、このSTSによるROS産生だけでなく、Cl^-電流活性化も抑制した。さらにROSスカベンジャーが、STSにより生じるAVD、カスパーゼ3の活性化、アポトーシス性細胞死も阻害した。これらの結果から、アポトーシス時に活性化するCl^-電流が容積感受性Cl^-電流であること、またSTSによるCl^-チャネル活性化はROS産生を介していることが明らかとなった。デスリガンド系アポトーシスによるCl^-チャネル活性化シグナルに関しては今のところ不明である。これらの成果については現在PNASに投稿中である。
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