研究概要 |
2コンパートメントモデルを用いた光刺激による体内時計の同調機構の解明。 体内時計の存在部位である視交叉上核にあるCalbindin D-28K (CalB)細胞は通常、時計遺伝子発現(Per1とPer2 mRNA発現)がほとんどないが、夜間の光刺激に対してのみ、刺激に反応して時計遺伝子を発現する(Hamada et al.,J.Neumsci.2001)。この領域とは逆に時計遺伝子がリズミックに変化し、光刺激に影響されないVasopressin (VP)領域がある。体内時計は1日の中の決まった時間にしか動かすことができない。光は夜の時刻に特異的に体内時計を動かすが、私は2コンパートメントモデルを用いて、この機構の解明を試みた。今回、CalB細胞が光刺激を体内時計機構に伝達するゲート細胞であることをCalBアンチセンスを用いた実験から明らかとした(Hamada et al.,J.Neurosci,2003)。CalB蛋白の細胞内、核の局在にサーカディアンリズムがあり、昼低く、夜に高いというリズムを示すことを発見した。さらにCalBアンチセンスオリゴを投与することにより、夜間の光刺激が引き起こす体内時計を動かす機構を抑制し、逆に体内時計を動かすことができない昼間の光刺激により、体内時計を動かすことを明らかとした。このことからCalB細胞が光情報を選択的に体内時計機構に伝えていることが分かった。次に光情報がどのようにしてCalB細胞から時計細胞全体に伝達されるか調べ、光情報はCalB細胞から通常、時計遺伝子がリズミックに発現しているVP領域のごく限られたところに伝達すること、そしてその領域から遅い速度で規則正しく周辺の細胞群に情報を伝達していくことを明らかとした(Hamada et al.,Eur.J.Neurosci,2004)。
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