1.シェアストレスによるL-PGDS遺伝子誘導のメカニズム解明について L-PGDS遺伝子のプロモーターを組み込んだルシフェラーゼレポーターベクターを内皮細胞に導入してシェアストレスがL-PGDSの転写活性におよぼす影響を検討した。その結果、シェアストレスはL-PGDS遺伝子の転写を転写因子AP-1を介して活性化することが明らかにした。この結果は今年3月の日本薬理学会で発表予定である。 2.PGJ_2ファミリーの血管内皮細胞におけるアポトーシス抑制効果について 血清飢餓により血管内皮細胞にアポトーシスを誘導し、それに対する15d-PGJ_2の作用を検討した。その結果、15d-PGJ_2はアポトーシス抑制蛋白であるinhibitor of apoptosis proteins(IAP)を誘導することによりアポトーシスを阻害すると考えられた。また、15d-PGJ_2によるIAPの誘導は蛋白の安定化によることを示した。この結果は昨年のAmerican Journal of Physiology(2003;285(1):H38-46)に掲載された。 3.動物血管傷害モデルを用いたPGJ2ファミリーの薬理効果の検討 現在、ラット頸動脈バルーン傷害モデルを作成し、浸透圧ポンプをもちいて15d-PGJ_2の長期投与を行い内膜肥厚を抑制するかどうかを検討中である。 4.血中・尿中L-PGDS濃度と動脈硬化の関係 現在健康診断受診者を対象として血清の採取および動脈硬化病変のマーカーとして頸動脈内膜中膜複合体厚(IMT)と上腕-足首脈波伝播速度を測定し、血中・尿中L-PCDS濃度を測定している段階である。 5.L-PGDS遺伝子多型と動脈硬化との関係 国立循環器病センターにおいて現在進行中であるミレニアム・ゲノム・プロジェクトでL-PGDSのすべてのプロモーター領域およびエクソンをシークエンスし、11個の新たな一塩基多型を見出した。そのうちアレル頻度が10%を超える一塩基多型に対して高血圧患者約1000名をジェノタイピングし動脈硬化との関係を解析中である。その一部を今年3月の日本循環器学会において発表する予定である。
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