研究概要 |
1.ラット頸動脈バルーン傷害モデルにおけるL-PGDS/PGJ_2ファミリーの薬理効果の検討 ラットの総頸動脈をバルーンカテーテルで傷害し、15d-PGJ_2を二週間毎日腹腔内投与を行ったところ、傷害による血管内膜の肥厚はコントロールに比べ有意に抑制され、15d-PGJ_2は生体内においても動脈硬化を抑制する作用があることが示唆された。 2.血中・尿中L-PGDS濃度と動脈硬化との相関関係の検討 地域一般住民において健康診断を実施し、書面にて同意を得た上で血液を採取し、血中L-PGDS濃度をサンドウィッチELISA法にて測定した。動脈硬化度は頸動脈エコーで測定した総頸動脈内膜中膜厚の最大値(c-IMT_<max>)および上腕-足首脈波伝播速度測定(ba-PWV)により評価した。211人から同意を得ることができ、高度の高脂血症(T-Chol>300あるいはTG>400)および糖尿病(HbAlc>8.0%)を除いた199人にて解析を行った。血中L-PGDS濃度は0.52±0.13(0.25-1.04,中央値0.50)mg/Lであった。血中L-PGDS濃度は高血圧、糖尿病の人で高く、動脈硬化リスクの蓄積とともに増加する傾向を認めた。血中L-PGDS濃度はC-IMT_<ma>、ba-PWVとともに正相関を示し、その相関は年齢、性で補正しても変わらなかった。重回帰解析では血中L-PGDS濃度はba-PWVの独立した危険因子であった。血中L-PGDS濃度は早期動脈硬化のマーカーとして使える可能性があると考えられた。
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