少量の平滑筋組織におけるβ-アドレナリン受容体(β-AR)の定量を可能にするため、極小の組織片を用いた新規受容体結合実験法を確立した。なお、本研究では、この結合実験法を普遍化するため、平滑筋組織の他、β-ARが高密度に発現している心房・肺・眼組織についても検討した。本研究より得られた知見を次に示す。 1.受容体結合実験に使用する組織量 (1)極少量の組織、例えば、ラット一個体分の心房、ウサギ一個体分の眼組織のみで、一例分の飽和実験もしくは置換実験が実施可能。 2.放射性リガンド (1)水溶性放射性リガンドである[^3H]-CGP12177Aを用いて、細胞膜上のβ-ARのみを特異的に定量可能。 (2)脂溶性放射性リガンドである[^3H]-dihydroalprenololでは、非特異的結合が高いため、定量不可能。 3.組織・β-ARサブタイプによる違い (1)適用可能な平滑筋:ウサギ結腸紐(β_1/β_2)・膀胱(β_1/β_2)・虹彩(β_2)・毛様体筋(β_2)における[^3H]-CGP12177Aの非特異的結合は低く、また、その特異的結合は、2000pM以下の濃度で飽和した。 (2)適用不可能な平滑筋:低濃度(50-2000pM:β_1/β_2)及び高濃度(1-100nM:β_3)の[^3H]-CGP12177Aを用いて、各サブタイプの定量を試みた。ラット胃底・回腸・膀胱・胸部大動脈・腹部大動脈、ウサギ胸部大動脈・気管支平滑筋、ヒト膀胱では、全結合に対する非特異的結合の割合が高く、特異的結合を良好に分離することは困難であった。 (3)適用可能な平滑筋以外の組織:ウサギ心房(β_1)・肺(β_1/β_2)・毛様体突起(β_2)、ヒト肺(β_1/β_2)における[^3H]-CGP12177Aの非特異的結合は低く、また、その特異的結合は、2000pM以下の濃度で飽和した。 以上の知見から、組織片を用いた受容体結合実験法は、極少量の組織(非特異的結合が著しく高い組織や受容体密度が低い組織を除く)における細胞膜上のβ-ARの定量を可能にすることが示唆された。
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