研究概要 |
<リン酸化型ポリコーム群の同定する>マウス胚から免疫沈降法により精製したEdr1,Edr2,M33,Ring1bをλ脱リン酸化酵素によって処理し,SDS-PAGEで確認したところEdr2,M33,Ring1bの大きいバンドは消失し小さいバンド1本になった.このことからそれら3つはリン酸化されていることが示された.一方,Edr1は2本のままであった.少なくともリン酸化以外のフォームが存在しているようである. <Hipkとポリコーム群の相互作用を調べる>Hipk1;Hipk2複合変異マウスとは異なってHipk1;Hipk3およびHipk2: Hipk3変異マウスでは顕著な骨の異常は見られなかった。ほとんどのHipk1: Hipk2ダブルホモ変異体は胚発生12日前で致死であるが,数多くのトライアルによってダブルホモ変異MEFの作製に成功した.そのMEFにおけるEdr2,M33,Ring1bのリン酸化バンドを確認したが,いずれも野生型と同じ2本のバンドが出現した.しかしながら,これらタンパク質は複数の部位でリン酸化されており,Hipk欠損による非リン酸化はバンドシフトには反映されない可能性が残っている.Edr2,M33,Ring1bとHipk2を共発現した細胞を用いて免疫沈降法を行ってみると,驚いたことに,Hipk2はM33と共沈殿してくるが,Ring1bやtwo-hybrid陽性のEdr2とは共沈殿しなかった.細胞内においてHipk2への関わりはEdr2とM33は異なっているのかもしれない。この結果は、Hipkによるポリコームリン酸化の可能性を示している. <抗Hipkモノクローナル抗体の作製とその評価>Hipk1抗体に次いでHipk2およびHipk3抗体を作製することができた.Hipk2抗体は前出の免疫沈降法に用いられている.これら抗体を用いてU2-OS細胞を蛍光染色してみると,興味深いことにHipk1およびHipk2は核が一様に染まるのに対して,Hipk3は数十個の核内speckleとして局在していた.この局在は,核小体,PMLボディー,ヘテロクロマチン領域,そしてポリコームボディーいずれとも一致しなかった.この局在の意味は明確にされるべき課題であると考えている.遺伝学的証拠と合わせて考えて,Hipk3の役割は,Hipk1,Hipk2と異なっているのかもしれない.
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