蛋白質のユビキチン化は、プロテアソームによる分解や、エンドサイトーシスなどの様々な生命現象を調節する重要な翻訳後修飾の一つである。最近までユビキチン化基質の同定は場当たり的で、サイクリンなどの一部の蛋白質群に集中していたが、昨年、出芽酵母を用いた網羅的基質同定の結果が海外の研究グループより報告されプロテオミクス解析へとそのフィールドを移した感がある。そこで、我々も、以前から開発してきたユビキチン化基質蛋白質の網羅的検出システムの独自性をアピールするとともに、その基質プロファイリングへの応用を試みた。 <実験結果> 今年度は、ポリユビキチン化蛋白質を優先的に濃縮できる「パラレルタグ(PAP)法」の開発・改良を行ってきた。PAP法とは我々が独自に考案した方法で、それぞれが異なるタグで標識されたユビキチンを同時に発現させてポリユビキチン鎖に2種類のタグを取り込ませ、次にそれぞれのタグに対するアフィニティ精製を連続して行うシステムである。これにより、ポリユビキチン化蛋白質を選択的、高純度に精製する事が可能となる。 実際に、PAP法で得られたサンプルをLC/MS/MSで解析したところ、既知のものを含め130種以上の基質蛋白質候補が同定された。そこでそのうち新規のものに個別に検討を加えたところ、約80%程度においてユビキチン化が確認され、中には刺激によるユビキチン化の程度に変動が認められたものもあった。また、これらの基質群は他のグループの報告のそれとは部分的にしか重なっておらず、我々のアプローチの独自性が示された。 基質プロファイリングへの第一歩として、F-box蛋白質:MET30p過剰発現下での基質蛋白:MET4pのPAP法による濃縮状況を調べたところ、MET30p依存的なユビキチン化MET4p収量の増減を認め、網羅的プロファイリングへの応用が可能であると判断した。
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