研究代表者は、これまでにCytoTrap法を用いてRab7低分子量G蛋白質の新規標的蛋白質Rabring7を同定している。本研究では、Rab7による後期エンドソーム/リソソーム系の輸送制御を解明することを目的に、Rabring7の解析を進めた。そのなかで、Rabring7にはアミノ酸レベルで約40%の相同を示す相同遺伝子が存在することを見い出した。この遺伝子産物は、Rab7とは結合せずにRab8と特異的に結合することからRabring8と命名した。Rabring8もRabring7と同様に、N末端側にRab結合領域、C末端側にRING finger motifしており、このRING finger motifがRabring8によるRab8のポリユビキチン化反応に寄与していることを明らかにした。Rabring8によるRab8のポリユビキチン化はK48Rユビキチン変異体を発現させた細胞でも観察されたこと、また、Rabring8の強制発現により細胞内Rab8の発現量は変化しなかったことから、Rabring8はユビキチンープロテアソーム系を介してRab8の発現量を調節しているのではないことが示唆された。Rab8はトランスゴルジネットワーク(TGN)から形質膜への輸送を制御すると考えられている。実際、Rabring8の強制発現によりTGNから形質膜へのEGF受容体の輸送が、GTP結合型Rab8を強制発現させた場合と同様に抑制を受けた。ユビキチンは後期エンドソーム/リソソーム系輸送制御においても鍵となる分子であることから、来年度はRabring8で得られた知見をもとに、Rabring7とユビキチン化反応との関連に注目した解析を行いたい。このように本年度の研究は予想以上に進展し、当初の目的はほぼ達成できた。
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