(1)インスリン分泌に関わるATP、cAMP、カルシウムセンサー分子が膵β細胞の細胞膜の特定領域で統合され、これらの分子が細胞内シグナルを効果的に分泌装置へ伝達することが示唆されている。本年度これらの統合された分子群の内、cAMP-GEFII(cAMPセンサー)とSUR1(ATPセンサー、K_<ATP>チャネルの調節サブユニット)の結合がcAMPによって制御されていることを明らかにした。一方、Piccolo(カルシウムセンサー)とVDCC(電位依存性カルシウムチャネル)の結合はカルシウム存在下でも維持されることを明かにした。これらの成果から、ATP、cAMP、カルシウムセンサー分子の統合にはcAMPが重要であることが示唆された。 (2)昨年度から引き続き、インスリン分泌装置を同定する目的で、インスリン顆粒を分離、精製後、2次元電気泳動による解析を行った。展開されたスポットを質量分析法を用いて解析するにあたり、大量のインスリン顆粒が必要である。そのため昨年度確立した分離、精製法を大規模調製用に一部を改良した。具体的には、膵β細胞株MIN6細胞を破砕後、初めにiodixanol密度勾配による超遠心法を行い、さらにショ糖密度勾配による超遠心法を行った。この方法により、簡便かつ大量にインスリン顆粒を集められ、2次元電気泳動に必要なタンパク質量が充分に確保できた。 (3)グルコースやその他の分泌促進因子で刺激された時の細胞タンパク質のリン酸化とインスリン分泌の重要性は指摘されているが、その分子基盤は明らかではない。そこで(2)の分離、精製法を用いてリン酸化タンパク質を同定する目的で、(2)の改良法を開発した。
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