研究概要 |
ホスホリパーゼA2(PLA2)はグリセロリン脂質sn-2位のエステル結合を加水分解する。反応の結果として生じる遊離脂肪酸やリゾリン脂質は、それ自体あるいは代謝物が生理活性を発揮することが知られている。これまでのcPLA2α欠損マウスの解析から炎症・アレルギー性疾患における枢要な役割が想定されるにいたっている。 炎症・アレルギー性疾患に深くかかわるサイトカインネットワークとcPLA2αとの機能連関を明らかにするという観点より、敗血症疾患モデルとされるCLP(caecal ligation and puncture)を施行した。cPLA2α欠損マウスではプロスタグランジン、ロイコトリエン量の顕著な減少が認められると同時に、腹膜炎に伴う炎症性サイトカイン誘導が著明に減弱していることが判明した。しかしながら、致死率については、遺伝型による統計的に有意な差は認められなかった。CLPモデルにおいて生理活性脂質が炎症性サイトカイン量に影響を与えるメカニズムならびに個体の反応への寄与に関して知見をまとめ、投稿準備を進めている。 また、遺伝子データペース検索より同定した新規cPLA2については、cPLA2δ,ε,ζと命名して生化学、細胞生物学的解析を進めた。ノーザン解析ではこれらの新現cPLA2は特定の臓器に偏った発現分布を示し、基質特異性もcPLA2αとは異なっていることが明らかとなった。2004年12月、J.Biol.Chem.誌に投稿、現在、追加実験ならびに改訂作業をおこなっている。
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