個体での酸化還元動態が関与する生命現象において、比較的酸化状態に傾いている細胞外空間での調整が重要な役割を担っており、実際、疫学調査により細胞外空間の抗酸化物質濃度が多種の生活習慣病と逆相関を示すことが報告されてきているにもかかわらず、細胞外空間の酸化還元動態調節とその生理的意義には不明な点が多く残されている。 ヒトやげっ歯類のプラズマ中の抗酸化分子の中では、アスコルビン酸(AA、ビタミンC)の還元力が強く、また、その生理濃度も30-90μM存在し、他の物質に比べて高いことから、AAは細胞外空間の酸化還元調節の重要分子であると考えられその生物作用の解析が望まれる。 しかしながら、従来用いられてきたAA欠乏食によるAA欠乏動物では細胞内空間のAAも同時に低減するため、細胞外空間のAAの生物作用のみを浮き彫りにすることは困難であった。そこで、申請者はプラズマ中のAAを特異的に瞬時に消去する新規動物モデルを確立した。現在までの実験の結果、細胞外空間のAAが低下すると、細動脈内皮細胞の一酸化窒素(NO)のbioavailabilityは変化しないが、細静脈内皮細胞の一酸化窒素(NO)のbioavailabilityが顕著に低下することが明らかとなった。また、NOに依存すると考えられる血圧や、白血球-内皮細胞の相互作用を検討したところ、AA消去により全身血圧の変化は認められなかったが、白血球の内皮細胞への接着は顕著に増強した。 今後は、AA消去により静脈特異的にNOのbioavailabilityが低下する機序について検討予定である。
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