悪性リンパ腫発症の原因遺伝子ではないかと考えられているBCL6においては、正常な胚中心B細胞においても遺伝子変異が起こっていることはよく知られている。近年、BCL6転座のパートナーとして報告された遺伝子(pim-1、RhoH/TTF)のゲノムにもhypermutationが起こっていること、かつ、パートナー遺伝子における遺伝子変異は腫瘍特異的にのみ起こっていることが報告された。悪性リンパ腫症例において特異的に遺伝子変異の影響を受けやすい遺伝子が見いだされ、その遺伝子の変異が悪性リンパ腫の発症や進展、予後などと相関を示せば、これを分子マーカーとする遺伝子診断法の開発などに役立つのではないかと考えられる。 そこで、これまでに報告したBCL6転座のパートナー遺伝子(pim-1、transferrin receptor、CIITA、EIF4A2、ikaros)をその候補として、悪性リンパ腫のゲノムにおける遺伝子変異の有無を検討した。症例数は、昨年度の50症例にさらに10症例加えた。方法について、具体的には、各パートナー遺伝子がBCL6と結合していた転座点近傍の領域、すなわちhypermutationが起こりやすいとされる領域のうち約1.5kbpについて、遺伝子変異の検索をまずはdirect sequencing法により行った。その結果、CIITA遺伝子イントロン中において約200bpの欠失をもつ症例、EIF4A2遺伝子5'非翻訳領域(エクソン)中にpoint mutationをもつ症例などの存在が示された。そこで本年度は、alleleごとの遺伝子変異についてさらに詳細に検討するため、組換えDNA実験(本年度新規にて申請し、承認を得た)を用いてクローニングおよびシーケンス解析し検索を行った。この結果について、学会(第27回日本分子生物学会、神戸、12月)にて示説発表を行った。
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