遺伝子のプロモーター領域に存在するCpGアイランドの異常メチル化は、癌抑制遺伝子の不活性化機構の一つであり、発癌において重要な役割を果たすと考えられている。染色体3p21領域は癌で欠失が多いばかりでなく、異常メチル化されている遺伝子も見つかっている。CACNA2D3遺伝子は電位依存性カルシウムチャンネルの構成要素の一つであり、3p21に位置している。最近、カルシウムチャンネルに関連する遺伝子CALCA1IとCACNA1Gのメチル化が消化器癌の発生に関わっていることが報告されたが、CACNA2D3と発癌との開関連性は不明である。本研究ではCACNA2D3と発癌との関係を明らかにするため、胃癌におけるCACNA2D3のメチル化を解析した。4例の胃癌と1例の大腸癌由来培養細胞について、CACNA2D3遺伝子の発現をRT-PCR法で調べ、メチル化の有無を5'上流のCpG領域でメチル化特異的PCR(MSP)で検討した。その結果、CACNA2D3発現陰性の癌細胞ではメチル化が認められた。しかし脱メチル化剤5-aza-2'-deoxycytidineを最終濃度5μMで発現陰性の細胞に72時間反応させると、全例でCACNA2D3の発現が誘導された。ヒト正常胃および大腸粘膜上皮でのCACNA2D3発現は陽性であり、メチル化は検出されなかった。さらに原発性胃癌症例43例におけるMSP解析では、14例(32.6%)でCACNA2D3の異常メチル化が認められた。従って、CACNA2D3の発現調節にはメチル化が関連しており、かつ胃癌の発生に重要な役割を持つ可能性が示唆された。現在、CACNA2D3の機能的役割を調べている。
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